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Le Chat
841mm×537mm
フランス語
ゴシサイズ・イタリック体
ボードレールの「惡の華」より一篇を抜粋。タイトルは猫となっていますが、ただの動物のネコではなく、ボードレールが愛した女性の一人がインスピレーションになっているようです。よって作品でもつややかな黒い猫をイメージしました。かなり初期の作品で、flourishなどの線も硬いですが、数少なくレイアウトが気に入っている作品で、下の引用部分のグラデーションもよくできていて気に入ってます。
Le Chat
Viens, mon beau chat, sur mon cœur amoureux ;
Retiens les griffes de ta patte,
Et laisse-moi plonger dans tes beaux yeux,
Mêlés de métal et d’agate.
Lorsque mes doigts caressent à loisir
Ta tête et ton dos élastique,
Et que ma main s’enivre du plaisir
De palper ton corps électrique,
Je vois ma femme en esprit ; son regard,
Comme le tien, aimable bête,
Profond et froid, coupe et fend comme un dard,
Et des pieds jusques à la tête,
Un air subtil, un dangereux parfum,
Nagent autour de son corps brun.
鈴木信太郎訳
来れ、わが麗しき猫、わが戀の炎(も)ゆる心に。
汝(な)が趾(あし)の爪をかくして、
金銀と瑪瑙(めなう)の混れる美しき眼の中に
わが體を投入れしめよ。
しなやかのまろき背(そびら)と 頭(かうべ)とを ゆくらゆくらに
わが指の搔撫(かいな)づるとき、
あるは又、稲妻はらむ肉體を わが手の觸れて
歡樂に醉ひ癡れるとき、
わが妻を 心の中にわれは見る。その眼相(まなざし)は、
なれの如、めぐき動物(いきもの)、
奥深く冷やかにして、投槍と 切り裂(つんざ)きて、
足のさきより頭(かうべ)まで、
銳(と)き氛(いきれ)、奇しく危(あやふ)き身の香(かをり)、栗皮(くりかは)色(いろ)の
肉體を旋(めぐ)りて 漂ふ。