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オウィディウスの変身物語よりナルキッソスのエピソードを抜粋。文全体を楕円の形になるようにレイアウトを配置しました、単語を切らずに楕円のシルエットになるように何回も調整を重ね、今回の作品で一番苦労した部分でした。使ったクワドラータという書体もあまり変形が多くないのも苦労した理由のひとつです。楕円の文字の部分はナルキッソスを映した泉に見立て、多めにとった白い余白は森を表してみました。引いて見たときに一粒の宝石としても見えるかもしれません。楕円の外側に金箔を貼った光の粒で一部を囲い、金粉でオウィディウスの名前を書きました、書いた文字をトレースしたレタリングになります。そして光の粒とオウィディウスの名前が宝石をはさむ石留めのようです。明るい緑色は春の泉の色をイメージしました。
inrita fallaci quotiens dedit oscula fonti,
in mediis quotiens visum captantia collum
bracchia mersit aquis nec se deprendit in illis!
quid videat, nescit; sed quod videt, uritur illo,
atque oculos idem, qui decipit, incitat error.
credule, quid frustra simulacra fugacia captas?
quod petis, est nusquam; quod amas, avertere, perdes!
ista repercussae, quam cernis, imaginis umbra est:
nil habet ista sui; tecum venitque manetque;
tecum discedet, si tu discedere possis!
大西 英文訳
幾度、偽りの泉に空しく口づけしようとし、
幾度、項を掻き抱こうとして腕を水に
浸けたことか。だが、水の中の自分を摑まえることはできなかった。
自分が何を見ているのか、分からなかった。だが、見えているものに恋い焦がれ、
欺いているその同じ錯誤が目を焚きつける。
軽信の少年よ、逃げる虚像を、なぜ摑まえようとする。お前の求めているものは
どこにもない。恋するものから目を逸らせば、消え失せてしまうのだ。
お前が目にしているものは、水面に映る虚像。それは
実体のない影にすぎない。お前と共にやって来て、留まり、お前と共に
去ってゆくものなのだ、そこから去ることがお前にできるものならば。




